●国産の夏イチゴで上場 北海道のベンチャー企業
夏や秋でもショートケーキに乗っているイチゴが、どこから来ているか知っていますか。これまで夏のイチゴは米国産がほとんどでしたが、最近は国産の新品種が急速に出回っています。開発したのは北海道のベンチャー。夏イチゴの商品化に20年近く取り組んできた社長の苦労が実り、昨年、農業企業では珍しい株式上場を果たしました。なかなか収益が安定しにくい農業を企業ビジネスとして成り立たせる試みとして、注目を集めています。
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「まずは食べてみてください」。高橋巌(いわお)さん(53)が差し出したイチゴを口に入れると、柔らかくてみずみずしい。いまの時期は、冬春のイチゴに比べると甘みは控えめで、やや酸味がある。さっぱりした味が特徴だ。
年中収穫できる「ペチカ」という品種だ。高橋さんが社長を務める株式会社「ホーブ」(北海道東神楽町)が開発し、95年に品種登録した。北海道や東北地方の約310の農家と契約してハウス栽培し、ホーブが夏から秋に出荷する。
国産イチゴの品種は、冬から春に実がなる「一季なり」が主流。一年中収穫できる「四季なり」の従来の国産品は、粒が小さいなどの理由であまり普及しなかったという。このため夏秋イチゴは主に米国産に頼ってきた。
ペチカは四季なり。サイズも昔の国産品より大きく「見ばえがいい」と業務用市場に普及し、05年の出荷量は約400トン。夏秋の国産イチゴの約6割を占め、輸入イチゴの10分の1の規模にまで伸びた。
03年に約80社だった販売先はいまや約370社。約790のケーキ店を全国展開するスイートガーデン(京都市)は、3年前から夏イチゴの主力をペチカにした。高桑章人・購買部長は「見た目と味が外国産より優れ、品質も安定している」と話す。
高橋さんは「昨年からはセブン―イレブン・ジャパンに並ぶお菓子にも本格的に使われるようになり、勢いがついた」と自信を強める。05年6月期の売上高42億円のうち10億円がペチカだ。
しかし、20年近い夏イチゴ開発・販売の道のりは、イチゴのように甘くはなかった。
高橋さんは子どものころから、ミカンが「体が黄色くなるまで食べる」ほど大好き。「将来は、おいしい果物をつくりたい」と考え、静岡大農学部でメロンを専攻した。
卒業後はワサビメーカーに就職したが、果物への夢を捨てられず独立。職場が北海道だったことから、「夏にイチゴを生産すれば売れるのではないか」と思いつき、87年に34歳でホーブを設立した。妻と元同僚の3人だけの出発だった。
いくつかの品種の栽培や開発を手がけては失敗し、たどりついたのがペチカ。独自に開発したものの、「身が柔らかくて輸送中に傷む」と一度はあきらめた品種だった。
しかし、販売用容器にくぼみを設けてイチゴ同士がぶつからないようにしたほか、室温5度の保冷コンテナで列車輸送するなど工夫した結果、傷むイチゴはほぼゼロに。 10年ほど前、食品メーカーのイチゴ大福に採用され、手応えを感じた。
一方で経営をペチカだけに頼らないように97年にイチゴ卸大手を買収。冬春イチゴも扱うことで、1年を通して供給する態勢を整えた。昨年8月、ジャスダックに上場した。社員は48人。
企業が農業をビジネスにするのは難しい。これまでにオムロン、JT、ユニクロを展開するファーストリテイリングなどの異業種が野菜流通などに参入したが、いずれも撤退している。
その中でホーブが上場を果たした理由について、日本総合研究所の大井大輔研究員は「夏イチゴは利益率が高いうえ、ペチカ以外も手がけることで天候リスクを分散できる」と分析する。
今後の課題は、家庭向けに販路を広げること。高橋さんは「夏や秋にイチゴを食べることが普及したら、消費量は大幅に増える」と期待する。
すでにスーパーのサミット(本部・東京)は4年ほど前から、6~7月にペチカを一部店舗で販売している。1パック398~498円。青果部の中島均チーフバイヤーは「ケーキを作るために買う人が多いが、知名度が上がれば、売れ行きが伸びる可能性がある」と話す。今夏は前年の2倍の売り上げが目標だ。
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「まずは食べてみてください」。高橋巌(いわお)さん(53)が差し出したイチゴを口に入れると、柔らかくてみずみずしい。いまの時期は、冬春のイチゴに比べると甘みは控えめで、やや酸味がある。さっぱりした味が特徴だ。
年中収穫できる「ペチカ」という品種だ。高橋さんが社長を務める株式会社「ホーブ」(北海道東神楽町)が開発し、95年に品種登録した。北海道や東北地方の約310の農家と契約してハウス栽培し、ホーブが夏から秋に出荷する。
国産イチゴの品種は、冬から春に実がなる「一季なり」が主流。一年中収穫できる「四季なり」の従来の国産品は、粒が小さいなどの理由であまり普及しなかったという。このため夏秋イチゴは主に米国産に頼ってきた。
ペチカは四季なり。サイズも昔の国産品より大きく「見ばえがいい」と業務用市場に普及し、05年の出荷量は約400トン。夏秋の国産イチゴの約6割を占め、輸入イチゴの10分の1の規模にまで伸びた。
03年に約80社だった販売先はいまや約370社。約790のケーキ店を全国展開するスイートガーデン(京都市)は、3年前から夏イチゴの主力をペチカにした。高桑章人・購買部長は「見た目と味が外国産より優れ、品質も安定している」と話す。
高橋さんは「昨年からはセブン―イレブン・ジャパンに並ぶお菓子にも本格的に使われるようになり、勢いがついた」と自信を強める。05年6月期の売上高42億円のうち10億円がペチカだ。
しかし、20年近い夏イチゴ開発・販売の道のりは、イチゴのように甘くはなかった。
高橋さんは子どものころから、ミカンが「体が黄色くなるまで食べる」ほど大好き。「将来は、おいしい果物をつくりたい」と考え、静岡大農学部でメロンを専攻した。
卒業後はワサビメーカーに就職したが、果物への夢を捨てられず独立。職場が北海道だったことから、「夏にイチゴを生産すれば売れるのではないか」と思いつき、87年に34歳でホーブを設立した。妻と元同僚の3人だけの出発だった。
いくつかの品種の栽培や開発を手がけては失敗し、たどりついたのがペチカ。独自に開発したものの、「身が柔らかくて輸送中に傷む」と一度はあきらめた品種だった。
しかし、販売用容器にくぼみを設けてイチゴ同士がぶつからないようにしたほか、室温5度の保冷コンテナで列車輸送するなど工夫した結果、傷むイチゴはほぼゼロに。 10年ほど前、食品メーカーのイチゴ大福に採用され、手応えを感じた。
一方で経営をペチカだけに頼らないように97年にイチゴ卸大手を買収。冬春イチゴも扱うことで、1年を通して供給する態勢を整えた。昨年8月、ジャスダックに上場した。社員は48人。
企業が農業をビジネスにするのは難しい。これまでにオムロン、JT、ユニクロを展開するファーストリテイリングなどの異業種が野菜流通などに参入したが、いずれも撤退している。
その中でホーブが上場を果たした理由について、日本総合研究所の大井大輔研究員は「夏イチゴは利益率が高いうえ、ペチカ以外も手がけることで天候リスクを分散できる」と分析する。
今後の課題は、家庭向けに販路を広げること。高橋さんは「夏や秋にイチゴを食べることが普及したら、消費量は大幅に増える」と期待する。
すでにスーパーのサミット(本部・東京)は4年ほど前から、6~7月にペチカを一部店舗で販売している。1パック398~498円。青果部の中島均チーフバイヤーは「ケーキを作るために買う人が多いが、知名度が上がれば、売れ行きが伸びる可能性がある」と話す。今夏は前年の2倍の売り上げが目標だ。
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